うぐいすハーモニカ

日記というより備忘録。何を書いても結局ミッチーこと及川光博氏の話をしてしまう系ベイベー。らぶ。

ジョーカー感想

三度の飯よりピエロとホラーを愛してやまない妹に「感想を聞きたい!」とせっつかれて、一緒に映画を観てきたので、忘れぬうちに感じたことを書き留めておく次第です。

さて、この作品はR15+。私はバイオレンスが大の苦手なので、最初は絶対行きたくないと駄々をこねていたのですが、既に2度鑑賞済みである妹と、出血シーンの直前に無言で突っついて予告してもらう&妹にもグランメゾン東京観てもらう(どさくさ)という契約を交わし、本日映画館に足を運ぶこととなりました。

以下、ネタバレ&バットマンシリーズを一度も通ったことのない素人(?)の戯言注意です。

 

まず、観終わった直後の感情ですが、かなり複雑でした。うまく言えませんが、根底にずっと悲しみに近いやりきれない想いがある中で、よかったね、と少しホッとしたような、そんな気持ち。突き抜けて悲しいわけでも手放しで喜べるわけでもなく、重たくて濃いめの鈍色の靄みたいなものに心が覆われてしまって、脳のメモリがめっちゃ消費されました。日常のパフォーマンスレベルが全体的に落ちるぐらい物思いに耽ってしまう感じ。ただでさえ貧困な語彙が、いつも以上に品薄状態で、結果的に「私は哀しい…」を連呼するトリスタンbotになっていました。

先述の通り、私は一切バットマンシリーズを観たことがないため、ジョーカーの名前と紫スーツ姿ぐらいしか知らず、どんな人物なのか知識ゼロでした。というか、なんなら今日まで人外なのかと思ってました。違った。めっちゃ人。しかも貧困層で、痩せっぽちで、派手なスーツとか着そうにも無い感じ。なんとなくマッチョで不死身なピエロなんだと思ってた。

この映画を観て、ずっと気になっていた違和感の正体は、食事シーンと睡眠シーンの圧倒的少なさでした。特に前者。アーサー(=ジョーカーの本名)が老いた母に食事を与えるシーンこそありましたが、本人は、恐らく私が記憶している限りでは、固体はおろか液体すら口にしていなかったと思います(してたらごめんやで)。タバコぐらいかな?まさかの気体オンリー。睡眠も、ベッドに横たわるシーンはあったものの、眠る姿は無かったような。終盤、思いっきり気を失ってはいましたが、あれを睡眠に含めてはいけないと思う。(後日追記:あっ思い出した、薬は飲んでたかもしれない。でもあれを食事に含めては以下略)

また、こういった映画にありそう(偏見)なえっちなシーンもほぼ皆無でした。ご近所女子とのチューぐらいかな。もちろんママの入浴シーンは含めません。つまり、人間の三大欲求に関する描写に重きがおかれていないのかなと。それが何処と無くアーサーの空白というか、いわゆる「人間的」でない性質というか、伽藍堂の部分を強調しているようで、全体的に漂う冷たく乾いた空気感に繋がるのかな、と思いました。「がらんどう」ってこんな字書くんですね(集中しろ)。

周囲から理解を得られず、指をさされて笑われながら、圧倒的孤独の中で生きてきた彼は、悲しいピエロそのもの。冒頭と中盤のシーンで涙のように崩れたアイメイクが印象的でした。

故に、終盤にパトカーのボンネットの上で貧困層の救世主的存在として神格化されるシーンでは、思わず「良かったね…!」と感じてしまいました。いや、まあうん、普通に考えたら良くないんですが。人とか死んでるし街とか燃えてるし。

でもこう、やっと今まで抑えていた自分らしさを解放出来るようになって、それがとてもハッピーなことに思えたんですね。自己解放の内容が倫理的にアウトなだけで。その、「少しも寒くないわ」のジョーカーverみたいな…(何処かしらに怒られそう…)

また、バイオレンスシーンだったのでちゃんとは観れてないんですが、同僚をハサミでイェーイ(婉曲)しちゃうシーンで、小さい人が助かったのが本当に良かった。彼からは一度も悪意を感じなかったし、普通に良い人だったから、絶対助かって欲しいと思っていたので。だから脅かさないであげてw

 

でも、ここまで悶々と考えていた側から妹に「これ報道シーン以外は全部アーサーの作り話説あると思ってるんだよね」と言われ、パニックに陥りそうになりました。待ってそれここまでの思考を無に還すやつ。

でも確かに、所々「そんな訳ある??」と思えるほどのご都合展開はありました。憧れの司会者とハグしたり(これはオタクがよくやる妄想だろう←)、ご近所女子と脈絡なく恋仲になったり(これは妄想と明言された)、地下鉄殺人の現場からすんなり逃げ果せた上に目撃情報も「ピエロのお面」(実際はメイク)とちょっと違っていたり、誰も追いかけてこないおかげで母のカルテをあっさり奪取できたり、ザルセキュリティのおかげで市長のもとにすんなり侵入できたり、ナースコールめっちゃ押してた母を何の邪魔もなく殺害できたり等々…思いつくだけでも嘘か本当か境目の分かりにくい出来事が沢山あります。その辺アレコレ考えているともう一度観たくなってくるやつですね。

というわけで、もう視覚的に興奮した所に感想を絞ります(挫けた)。

もうアーサー→ジョーカーになった瞬間のカタルシス。圧倒的カリスマ。時が止まるほどの美。もはや芸術でした。ファンの方からは「おめー他のジョーカー観たことないだろーが💢💢💢」と怒られるかもしれませんが、なんかもう普通に正解を見せられた気分でした。色彩のバランスもスーツの形もメイクも、全て正解。清々しいまでの黄金比。とにかく、これまでの鬱屈した展開からの解放も相まって、あの階段シーンは永遠に見てられます。足下気をつけてね、という邪念は入りましたが。

また、ラストの、閉鎖病棟の真っ白な床にスタンプされる真っ赤な足跡、とても良きでした。が、その経緯を考えると確実に1人以上死傷者が出てるやつなので良きとか言ってる場合じゃない。

総じて、色々反芻しがいのある、興味深い作品でした。私1人では到底触れることのなかった映画なので、妹に感謝です。

 

よし、以上です。ちゃんとこれまでのシリーズを通っている方々の感想も読んでみたいな、と思いつつ終わります。知らないくせに語りすぎた感。では、また。